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●定年退職の時期であり,責任などから解放される一方で,仕事をしなくなることでやるせなさや虚しさを感じやすい.●再就職する場合,仕事量や給料が減る,責任ある仕事を任されないなどの役割変化により,社会から期待されていない感覚や,気詰まりを感じることもある.●老年期を迎えることへの意識が強まったり,定年退職をはじめとした役割変化や心身の衰えを感じたりすることで,自己概念が揺らぎ,迷いや葛藤を生じやすい.●これまでの人生経験から,総合的な判断力や洞察力,人間関係の調整能力にすぐれている.●労働時間の減少に伴い,それまでと比べ余暇時間が増え始める時期である.余暇を楽しく過ごせれば,自由や満足感を味わうことができる.一方,余暇時間を満足して過ごせないと,退屈や孤独を感じることもある.●子どもの独立,親やきょうだい・配偶者との死別や,退職による経済状況の変化など,喪失体験やそれに伴う生活環境の変化が起こりやすい時期であり,大きなストレスを感じやすい.●それらの変化に適応できないと〔p.388〕,無力感や絶望を抱き,うつ病,自殺につながることもある.●社会的役割の喪失や,心身の衰えを自覚し,老年期が目前に迫ることで,老後への不安を感じやすい.●高齢化に伴う老後期間の延長により,老後の生活設計を長期的に考える必要があることや,高齢者のみの世帯が増え介護を頼みにくいことなどが,不安の一因として考えられる.●60歳で定年退職する人がいる一方で,定年の延長や継続雇用などにより,その後も働き続ける人が増えている〔p.234〕.これらを機に,社会的役割や地位,職場での人間関係,経済状況や生活条件などの変化を経験する.●子どもの独立,親や配偶者の介護・死別,離婚などにより,家庭での役割や生活の変化を経験する.孫の誕生により祖父母としての役割を獲得する人もいる.●余暇時間を使って趣味や地域活動を始め,新たな人間関係を構築する人もいる.●向老期は,成人期から老年期〔p.186〕へ移行するための準備期間である.これまでの人生経験の蓄積から,判断力などにすぐれる一方で,定年退職をはじめとした役割変化や生活環境の変化が起こる時期でもあり,ストレスや老後への不安などを感じることも多い.そのなかで,中年期から引き続き自分の生き方を見直し,これからの生き方を考えることで精神的成熟を続け,老年期に備えていく.●向老期は,それまで築いてきた社会的役割が大きく変化する時期である.家庭や社会において第一線から退く人がいる一方で,定年の延長〔p.161〕などにより向老期のあり方は多様化し,個人差が大きくなっている.発達段階ごとの個人の理解と看護成人期の個人の理解と看護+αもっとわかる!143 総合的な力を発揮する一方で不安も 向老期の精神的特徴 社会的役割は多様化 向老期の社会的特徴■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■例人生経験による能力の発揮老後への不安定年後の再就職老年期に向けた自己概念の揺らぎ喪失体験の発生に伴うストレス社会的役割の変化祖父母としての役割の獲得余暇時間の増加による精神的変化新たな余暇活動の開始定年退職に伴う精神的変化など

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