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●深部静脈血栓症(DVT):deep vein thrombosis ●肺血栓塞栓症(PTE):pulmonary thromboembolism ●手術部位感染(SSI):surgical site infection●手術操作や麻酔の影響により,腸蠕動は低下あるいは停止している.これは生理的イレウスとよばれる.●生体反応により代謝が亢進し,蛋白質,脂質,グリコーゲンの分解が進む.これにより血糖値が上昇する.また,蛋白質の代謝産物である窒素やカリウムが尿中に排出される.●手術操作,術中の出血,疼痛などの影響により,血圧や脈拍が変動しやすい.●炎症反応を中心とする生体反応〔p.400〕により,体液とNaが体内に貯留する.しかし血管の透過性亢進などに伴って血漿がサードスペースに移行するため,循環血液量は減少する.これに疼痛などの影響が加わり,頻脈となりやすい.●術後しばらくは酸素吸入〔看●気管挿管の刺激により,気道分泌物が増加する.また,全身麻酔薬により気道の線毛運動が抑制されることや疼痛〔p.443〕の影響により,痰を喀出しにくい状態である.●麻酔の影響による呼吸抑制や,舌根沈下による気道閉塞が起こりやすい時期である.●深呼吸や排痰法を本人が意術後24時間以内●生体反応に伴って発熱が生じやすい.●体内の水分がサードスペースに移動するため,尿量が減少する.●腸蠕動が徐々に再開するが,まだ十分ではない.早期離床や経口摂取により腸蠕動が促進される.●排ガスがみられることがある.●代謝亢進や発熱はまだ続いていることが多いが,生体反応の沈静化とともに徐々に落ち着いてくる.●サードスペースに移行していた水分が血管内に戻り始めると尿量が増加する.●術後出血〔p.450〕,DVT,不整脈〔p.450,病②p.160〕などが起こりやすい時期である.●サードスペースに移動していた水分がリンパ系を介して血管内に戻り始める(この時期は侵襲の程度などによって異なる).このとき,心機能や腎機能が低下していると水分の排出が遅れ,うっ血性心不全や急性腎障害〔病⑧p.206〕が生じるおそれがある.●全身の回復に伴って呼吸状態が安定してくる.一方,気道分泌物の貯留による無気肺〔p.450,病④p.72〕などの合併症が起こりうる時期でもある.●腸蠕動が再開する時期である.術後48〜72時間を過ぎても再開しない場合は麻痺性イレウス〔p.451,病①p.161〕が疑われる.●全身の回復に伴って血圧や脈拍が安定してくるが,離床時に急激な変動(起立性低血圧〔看③p.325,病②p.398〕など)が生じる場合もある.●回復が順調であれば,血圧や脈拍は安定することが多い.●早期離床〔p.439〕により,呼吸状態の改善や効果的な排痰ができ,無気肺の予防につながる.●深部静脈血栓症(DVT)〔p.451,病②p.364〕を発症した場合,初回歩行時に肺血栓塞栓症(PTE)〔p.451,病②p.370〕が起こりやすい.●回復が順調であれば,呼吸状態は安定することが多い.●気道分泌物の貯留や無気肺が持続した場合,肺炎〔p.450,病④p.118〕を発症するおそれがある.術後24〜48時間●排便や排ガスがみられることが多い.●手術部位感染(SSI)〔p.451〕,縫合不全〔p.451〕,尿路感染〔看②p.284〕などの症状が現れる場合がある.●尿量が増加する時期を経て,通常の水分出納バランスに戻っていく時期である.水分の排泄が遅れた場合には,うっ血性心不全や急性腎障害が起こりうる.術後48時間以降●看護師は一般的な術後の経過を把握し,患者さんの個別性と照らし合わせ,起こりうる問題を予測しながら介入する必要術後は手術室退室から心身が回復するまでの時期である.この時期の患者さんは手術侵襲〔p.400〕による不安定な状態から回復し,重要他者〔p.35〕とともに術後の生活に適応していく必要があり,看護師はそれを支援する.本章では全身麻酔下で行われる予定手術〔p.409〕を想定して,術後の患者さん・重要他者の特徴やその理解に必要な知識を解説する. 侵襲から回復する過程で様々な反応がみられる 術後の患者さん本人の理解●術後の患者さんは,手術や麻酔による侵襲〔p.400〕から回復するために様々な反応を示す.この過程において患者さんの身②p.215〕を必要とする.434体的・精神的・社会的な状態は大きく変化していく.がある.時期呼吸識的に行う必要がある.身体的特徴循環消化・代謝・排泄監 修永田 明●●術後における対象の特徴●●手術療法を受ける個人の理解と看護/術後

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