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生活と療養の場ごとの個人の理解と看護療養の場の移行支援Aさんの例Sさんの例解釈なりゆきの分析目標と介入の方向性+αもっとわかる!ここで最も着目したいのは,在宅へ移行する予定の患者さんに対し,看護師が退院後の長期的ななりゆきをどのように予測しているか,という部分です.今回は情報収集から解釈に至るまでの詳細は省略し,「分析」の工程について詳しく解説します.解釈結果から,退院した後どんななりゆきが考えられ,どんな課題が明らかになるのか,確認してみてください.また,p.524で解説した次の注意点が,どこに該当するかも合わせて見てみましょう.Sさんは指先の細かい動きが苦手で自分では針を装着できないけれど,今は看護師が針を装着する介助をすれば,自分で自己注射ができるな.(介助により,健康管理状況が適切であるという解釈)Sさんは,治療計画上,退院後も自己注射を継続する必要がある.入院前自己注射の経験はないし,今も介助がないと一人で注射できない状態だな….退院後,介助がなくなったら,一人で自己注射を管理できなくなるおそれがあるね.同居する娘さんが介護に積極的なのは強みだな.(退院後,健康管理状況が不適切になるおそれがあるという退院後のなりゆきの分析)Sさんが,退院時までに自分で針を装着できるように,手指のリハビリテーションをする必要があるね.もし状態の改善が難しい場合は,娘さんにも情報を共有して,介助ができる体制を整えた方がよさそうだね.Aさんは右半身にうまく力が入らないけれど,今は看護師の軽介助があれば,手すりにつかまってトイレまで歩けるな.(介助により,身体活動状況が適切であるという解釈)Aさんは,自宅には手すりがないと話されていた.入院前は歩行は自立していたけど,今は麻痺があって手すりがないと安定した歩行は厳しいな….退院後,介助がなくなったら,入院前と同じように室内を移動することができなくなるおそれがあるね.(退院後,身体活動状況が不適切になるおそれがあるという退院後のなりゆきの分析)Aさんが,退院時までに杖歩行レベルまで回復できるように,歩行訓練を行う必要があるな.また,自宅への手すりの設置や,介護者が不在のときのポータブルトイレの使用なども考えた方がいいね.:退院後の経過や生活に関する基礎情報:入院前の状態を示す情報:退院後の長期的ななりゆきの分析脳梗塞後,右片麻痺になった活動-運動パターンの場合パーキンソン525 なりゆきの分析を例で理解しよう 在宅移行支援におけるアセスメントの例●在宅移行支援におけるアセスメントの考え方について,ゴードンの11の機能的健康パターン〔看④p.54〕を用いた例を次に示す.ここでは,在宅移行支援で焦点が当たることの多い「健康知覚-健康管理パターン」「活動-運動パターン」「価値-信念パターン」の3つを取り上げ,なりゆきの分析に重点を置いて解説する.■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■Kさんは,「退院後も口から食べたい」という希望がある.今は看護師の食事介助があれば,ゼリー食なら口から食べることができるな.(介助により,価値観・信念が守られているという解釈)Kさんは,病状的に今後も嚥下機能が低下した状態が続く.入院前の食事は自立して食べられていたけど,今は介助がないと安全に摂取できないし,食形態についての知識もない状態だな.退院後,介助がなくなったら,「退院後も口から食べたい」という意向を叶えるのは難しそう….(退院後,価値観・信念が守られなくなるという退院後のなりゆきの分析)Kさんが,自宅に戻った後も希望を叶えられるように,ご家族へ介助方法の指導や知識の確認,食形態の調整を行う必要があるな.訪問看護〔p.504〕の導入も検討しないといけないね.糖尿病で自己注射を開始した健康知覚-健康管理パターンの場合Parkinson病で嚥下機能が低下したKさんの例価値-信念パターンの場合

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