今回ご紹介するのは、母性看護学の産褥の経過です。 国家試験では毎年必ず出題されるといっていいほど重要なテーマです。
特に子宮復古、悪露の性状や量、乳汁分泌、精神的な援助について出題されやすいため、状況設定文の情報を頭に入れたうえで、正確にアセスメントできるようにしておきましょう。
□① 産褥とは分娩後、母体の状態が妊娠以前の状態に戻るまでの期間をいい、産後6~8週間までである。
□② 子宮底の高さは、分娩直後には臍下2~3横指であるが、分娩12時間後には臍高に達し、以後2~3日で分娩直後と同じ高さとなる。
□③ 分娩12時間後に1度子宮底が高くなる。これは膀胱内の尿貯留、子宮腔内の血液成分貯留、子宮の圧迫がなくなったことによる骨盤底筋群の緊張回復などによるものである。
□④ 分娩12時間後以降も、子宮底が高い場合は、子宮腔内の遺残物やそれに伴う凝血の貯留、子宮収縮不良などにより、子宮復古が妨げられている可能性を疑う。
□⑤ 子宮の復古を確認する指標として、子宮底の高さ、子宮硬度、後陣痛、悪露の量や性状を観察する。
□⑥ 子宮復古を促すための子宮収縮に伴う痛みを後陣痛という。産褥2~3日程度みられ、経産婦はより強く感じやすいが、個人差が大きい。痛みが強い場合は、鎮痛薬の使用を医師に相談する。
□⑦ 射乳を起こすオキシトシンには、子宮収縮作用もある。このため、授乳時の吸啜刺激によってオキシトシンが分泌され、後陣痛が増強する。
□⑧ 子宮の大きさは、産褥6~8週頃に非妊娠時の大きさである鶏卵大となる。
□⑨ 子宮頸管は産褥3日頃には1~2指開大となり、4週頃に閉鎖する。
□⑩ 悪露は主に子宮腔内や産道から排出される産褥期の性器分泌物である。分娩直後~産褥3日では赤色(血性)悪露、産褥4日頃から1~2週では褐色悪露、それ以降は黄色悪露になり、産褥4~6週までに白色悪露へと移行する。
□⑪ 分娩直後は、分娩時の児頭による膀胱の神経圧迫などにより、尿閉や尿意減弱などの一時的な排尿障害を生じることがある。
□⑫ 産褥初期(分娩後1週間以内)では、尿量増加、体重減少などがみられる。
□⑬ 分娩後数日間は、特に疲労と不安を感じやすい。身体の疲労回復を促しながら、母親が育児に意欲をもてるように支援する。
□⑭ 子宮底の高さ、子宮硬度、後陣痛、悪露の量・性状、臭気や凝血の有無など、子宮復古の状態を観察し、外陰部の清潔保持を促す。
□⑮ 残尿による尿路感染の予防と、子宮収縮の促進のため、3~4時間ごとの排尿を促す。尿量を確認し、自力での排尿が困難な場合には、導尿を行う。
□⑯ 分娩後早期の離床は、子宮収縮や悪露排出を促進し、血栓症などを予防する。正常分娩であれば、全身状態に留意しながら、分娩2~6時間後には歩行開始を促す。
□⑰ 分娩時に異常出血や第3度以上の会陰裂傷があった場合や、帝王切開後などは、経過に合わせて離床させる。
□⑱ 産褥期に会陰切開部の疼痛がみられても、発熱や創部の感染などの異常がなければ、正常な創傷治癒過程であると考えられる。痛みが強い場合は疼痛コントロールを検討し、褥婦が育児行動や生活に、不安や制限なく取り組めるよう支援する。
□⑲ 褥婦は会陰や産道の傷に対する恐怖や、骨盤底筋群の弛緩、ホルモンバランスの変化などから便秘になりやすい。便秘は子宮復古の妨げともなる。排便時にいきんでも創部は離開しないことを伝えて不安を軽減し、腹部マッサージ、食物繊維の多い食べ物や水分の摂取、歩行などの対処法のほか、適宜緩下剤の投与や浣腸を実施する。
□⑳ 産褥体操は、骨盤底筋群の回復や創部痛の緩和、血液循環促進、子宮復古の促進を目的に実施する。できるだけ、身体も心もゆったりした気持ちで行うように指導する。
□㉑ 産褥2、3日を目安に分娩体験の振り返りを行うことをバースレビューという。自己概念の再構築を通し、出産に対する自己肯定感を促すケアのひとつである。母親役割の獲得にもつながる。
産褥期の生理的変化で正しいのはどれか。 1.児が乳頭を吸啜することによってオキシトシンが分泌される。 2.子宮が非妊時の大きさに戻るのは分娩後約2週である。 3.分娩後は一時的に尿量が減少する。 4.プロゲステロンが増加する。
解答は,下記に記載してあります. 詳しい解説や基本事項などの知識は『クエスチョン・バンク2025』を確認しましょう!
子宮復古状態を観察する手順で正しいのはどれか。 1.観察は排尿前に行う。 2.褥婦にはFowler〈ファウラー〉位をとってもらう。 3.褥婦の膝を伸展させて子宮底の高さを測定する。 4.子宮底長は恥骨結合下縁から測定する。
Aさん(38歳、初産婦)は、妊娠38週3日に2,900gの女児を正常分娩した。出産前は、Aさんは夫と2人で暮らしていた。引っ越して3か月であり、周囲に親しい知り合いや友人はまだいない。
〔112〕産褥3日。子宮底の高さは臍下3横指にあり硬度良好であった。乳房は軽度緊満しており、乳汁分泌がみられる。体温37.0℃、脈拍76/分、血圧124/72mmHgであった。訪室時、Aさんは「体がなんとなくだるいです。理由もないのに涙が出てきます」と涙ぐんでいた。Aさんの状態として考えられるのはどれか。 1.産褥熱 2.高血圧症 3.産後うつ病 4.マタニティブルーズ
〔113〕看護師はベッドサイドの椅子に座り、Aさんから育児について分からないことが多いという話を聞いた。話し終えたAさんは「少しすっきりしたような気がします」と言った。このときの看護師の対応で優先度の高いのはどれか。 1.元気づける。 2.休息を促す。 3.精神科の受診を勧める。 4.母親として自覚するよう話す。
〔114〕産褥5日。Aさんは「少しずつ育児ができるようになってよかったですが、自宅での育児は不安です」と話している。看護師の対応で最も適切なのはどれか。 1.児童相談所に連絡する。 2.保育所の利用を勧める。 3.新生児訪問の時期を早めるよう市町村保健師に依頼する。 4.子育てをしている親の会に退院直後から参加することを勧める。
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この内容が、皆様の合格のための一助となれば幸いです。
引き続き、合格に向けて頑張って下さい! そして、国試本番で存分に力を発揮できますように!
編集部一同、皆様の合格を心よりお祈りしております。
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