毎年、メディックメディア編集部には、看護実習でのレポートの書き方に悩める看護学生さんたちの声がたくさん届きます。“アセスメントが書けない!”“書き出しから迷ってしまう…”といった声は最も多い声の1つ…。そんな学生さんの力になるべく、どんな患者さんの実習でも使えるワザをご紹介したいと思います。 今回は、その1つとして、ゴードンの機能的健康パターンを詳しく解説していきます。 これを読めば、あなたもゴードンの機能的健康パターンを自分のものにすることができるはず!
簡単にいうと、患者さんを看護の視点でアセスメントするための枠組みの1つ。 看護過程を展開していくには、患者さんの情報を身体的・精神的・社会的な側面からもれなく正確に収集・分析し、健康上の問題をとらえる必要があります。とはいえ、患者さんを3つの側面から「看護の視点で」「もれなく正確に」アセスメントするのって、なにも指標がないと難しいですよね?
そこで登場するのが、アセスメントの枠組みです。アメリカの看護理論家、マージョリー・ゴードン氏(1931-2015)は、どんな看護場面でも適応できる基本的なアセスメントの枠組みとして、この11の機能的健康パターンを開発しました。 それが、みなさんが学校で習った「ゴードンの11の機能的健康パターン」なのです。
例えば、Aさんという糖尿病の患者さんを実習で受け持ったとします。「ゴードンの健康知覚-健康管理パターンに沿って情報収集しアセスメントしてみてください」と先生に言われても、看護過程を習ったばかりでは、困ってしまいませんか?しかもこれを11パターン分…。この記事を書いている編集者は、まず「健康知覚-健康管理パターン」という言葉で挫折しました。健康“知覚”って何……?言葉の意味がわからなくて何をアセスメントしたらいいかわからない…!となってしまったのです。
看護過程を習い始めた学生さんにとって、このゴードンの機能的健康パターンの名称はちょっとイメージしづらいのではと感じています。でも、実はゴードン氏本人はそれぞれのパターンにおいて何をどんなふうにアセスメントしたらよいのか、自身の著書「アセスメントの覚え書 ゴードンの機能的健康パターンと看護診断」(医学書院)や「看護診断-その過程と実践への応用」(医歯薬出版)などで示してくれているのです。そこで、メディックメディア編集部では、これらを参考に、機能的健康パターンをそれぞれかみ砕いて各パターンに存在する要素を明らかにしてみました。すると、アセスメントすべきことがグッと見えてきたのです。早速1つ見ていきましょう。
(補足:安全対策とは、風邪をひかないように実践している健康法や、例えば麻痺がある場合に転倒予防のために患者さん自身が対策していることなどが含まれます)
いかがでしょうか。健康知覚-健康管理パターンって、こういう要素から構成されているんだ!ということがわかりやすくなったと思いませんか?
みなさんが実習や授業で看護過程を展開するときのレポート用紙は、パターンごとにアセスメントを記載しますよね。その時にみなさんは、まずは「●▲パターンに問題はないかな?」という視点でアセスメントしていくと思いますが、まだまだ看護過程が慣れていない段階では、なかなか難しいのではないでしょうか。
そこで、この「●▲パターン」を、かみくだいた言葉に置きかえて考えてみてください。 例に挙げた「健康知覚-健康管理パターン」で見てみましょう。
看護過程を展開することに慣れた人(もちろん看護師さんも)であれば、上級編の視点を使って、もれなくアセスメントする(つまり、頭の中では初級編で示したような細かい視点でアセスメントする)ことができると思いますが、初学者のかたは、まずは初級編の視点でみてみることをオススメします。 ちょっと視点が増えて、「むむ…」と思うかも知れませんが、少しかみ砕いてみることで、健康知覚-健康管理パターンでは患者さんの何をアセスメントすればよいか?ということがみえてきたと思いませんか?
それでは、すべての機能的健康パターンについて、かみくだいたアセスメントの視点をご紹介します。
※参考文献 『看護診断-その過程と実践への応用 原著第3版』(1998、医歯薬出版) 『ヘンダーソン・ゴードンの考えに基づく 実践看護アセスメント 第3版』(2011、ヌーヴェルヒロカワ) ※書籍『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』と表記を合わせるため一部変更(2020.07.15)
以上が、すべての機能的健康パターンにおけるアセスメントの視点です。視点が多くて嫌だな〜と感じた方は、自分が「まだ理解しきれていないなぁ」と思うパターンだけでも、このアセスメントの視点を使ってみてください。患者さんのどこをみなければならないのか?という視点が具体的に見えてくると思います!もちろん、この視点に該当するすべての情報を収集できることは、実際の臨床現場ではほぼ無いと言っても過言ではないでしょう。このアセスメントの視点を用いるときに大切なのは、この視点に該当する情報をもれなく収集してくることではなく、得られた情報を使って何をアセスメントするか?という指標にすること、そして情報が足りない時の指標にすること、ではないでしょうか。
このアセスメントの視点(初級編)を使って、具体例でみてみましょう。 例えば、実習で受け持ったYさん(会社員)から得た情報が次のようだったとします。
では、ここでクイズです。 この情報は、健康知覚-健康管理パターンの「患者さんのこれまでの/現在の健康に関する認識」「患者さんの健康管理状況」「患者さんの安全対策」のうち、どの項目をアセスメントできる情報になると思いますか?
正解は、 「健康管理状況」。 健康診断の受診に関する情報は、当てはめやすいですね。
では、次のクイズです。この情報から患者さんの健康管理状況に問題はないでしょうか?
要精密検査と言われているにも関わらず検査を受けに行かない、という姿勢は、健康管理に対する望ましい状況からは逸脱した姿勢ですよね。そのため、 「健康管理状況に問題あり」もしくは「不適切な健康管理状況」 といった答えになるでしょう。 そうです、この一連の流れがアセスメントの視点による患者さんの情報解釈になるのです。このような情報解釈ができたら、Yさんの健康知覚-健康管理パターンは、機能障害的(機能不全)パターンであるということに繋がっていきます。
ちなみに、【アセスメント】はまだこれだけでは終わりません。 各機能的健康パターンにおいて、上で述べたポイント②で適切か不適切か、正常か逸脱かという判断したら、そうなってしまった患者さんの原因やなりゆき(リスク)、強みを考え、健康上の問題を導き出します。その後、それぞれの機能的健康パターンであがった健康上の問題を1度まとめてから、再度、原因(因果関係)を精査・整理すると、看護問題(看護診断)を決定することができます。このあたりについては、また別の記事で詳しく解説していきたいと思います!
実習記録のアセスメントの欄を書くときに、どうやって書いたらいいかわからない!と悩んでいるなら、まずはこのアセスメントの視点(初級編)に答える気持ちで、アセスメントを書いてみて下さい!もちろん、その際には、患者さんの年齢や性別、疾患、治療などを考慮すること、そしてそれぞれの視点において、患者さんのこれまで・現在・なりゆきと時系列で考えることを忘れずに! なんだか考えることがいっぱいで頭がパンクしそう……しかし、このアセスメントの視点は、どんな患者さんであれ共通して使える視点なので、覚えておいて損はないはず! ぜひ、実習記録に活用してみてくださいね!
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