文京学院大学 保健医療技術学部 看護学科 助教 今井亮先生
2014年に設立された文京学院大学保健医療技術学部看護学科は、初めての卒業生を送り出して以来、3期連続で看護師国試合格率100%を達成しています。 高い合格率を維持する秘訣や昨今のコロナ禍における教育の状況、オンライン授業で学生を主体的に巻き込む工夫について伺いました。
ふたつ要因があると思います。ひとつめは、早期から模試を学力把握のバロメータに使っていること。 そしてふたつめは学科として、学生をサポートする仕組みがあることです。
まずひとつめ。基礎学力を定着させる目的で、1年生のうちから学年の最後に必要な知識の獲得状況を学生個々が認識できるように、模試を受験してもらっています。模試の種類も学生たちが選択しています。3年生では年2回になります。模試に向けて勉強をする学生としない学生とで成績の差が如実に表れるため、学力をアセスメントするひとつの目安となります。4年生に上がるときに、模試の結果が振るわない学生はおおよそ20人の「強化グループ」に入れます。強化グループでは教授陣の補講を受けさせるほか、自習などみんなで勉強する機会を設けて情報交換をできるようにしています。 模試の成績で特に重視しているのは必修ですね。国家試験では、必修問題の正解率が8割を超える必要がありますから、ここをおろそかにしては合格率100%をとることはできません。
そしてふたつめ。当校では、1学年を25人ずつ4つのグループに分け、それぞれに「クラスアドバイザー」という教員をつける仕組みがあります。クラスアドバイザーは、いわば担任のようなもので、教員の経験によって差が出ないように、教授あるいは准教授と助教がひと組となって各グループを受け持ちます。グループは1年生から4年生になるまで変わりません。 自分が担当している学生の模試や定期テストの成績、学習状況などを把握し、進級時など適宜面接を実施します。学生からすると、誰に相談すればいいのかがわかるので、勉強のことや生活のことなど、相談しやすい環境にあるのです。 こうして環境を整えることで、すべての学生に目が行き届くようにしています。
「クラスアドバイザー制度」に加えて、4年次には統合実習の担当教員が国家試験の対応まで責任をもって1年間学生をサポートする仕組みも国試合格率100%の達成に寄与しています。4年生では学生が自身の興味に基づいて、領域別に4~5人のゼミに所属し、統合実習を行います。このゼミを受け持っている教員が、ゼミに所属している学生の模試・実習・学習状況などをよりきめ細かく把握しています。
講義は、すべてオンライン授業になりました。教員の作成した動画を学生に視聴させるというシステムです。 私の場合、あらかじめ次回以降の講義内容に関する課題を学生に渡し、予習として、ノート見開き1ページに、そのまとめを書かせました。そしてそれを写真に撮って、クラウド上の共有フォルダにアップさせるのです。今の学生たちはインスタグラムなどで写真をアップし慣れているので、すごくスムーズでした。あらかじめ先のスケジュールまで伝えておくことで、できる学生はどんどん予習をして貯金をします。そして私はそのすべてに目を通して、良かったところや、追加するとより良くなる視点などについてコメントをし、その様子をすべての学生に共有します。 そうすると、課題がなかなか進まなくて迷っていた学生も、その写真やコメントを見て、「こういう視点があるんだ」「こういうふうにまとめればいいんだ」といったかたちでヒントを得るのです。学生たちを見ていると「真似はしちゃいけない。すべて自分でやらなくちゃいけない」という風潮があるのを感じますが、まずはうまい人の真似をすればいいと思うんです。 このように、勉強が得意な学生の課題を、できずに悩んでいる学生が見ることで、全体の底上げにつながります。
これまでの対面式のオフライン授業のときは、実は勉強の得意な学生と勉強に苦手意識のある学生は、「教室のどこに座るか」から分断されています。そしてなんとなく交友関係が固定化してしまうので、みんながどういうふうに課題をやっているかは全体的には共有されないわけです。それがオンラインで写真をアップさせて共有させること、そして最初に予習の課題を先々まで示しておくことで、自然と勉強の得意学生がそうでない学生を引っ張り上げるという構図になりました。
臨地実習は期間が短くなり、その分をオンライン実習で補う、「臨地+オンライン」のハイブリッドになります。特に領域別実習がもともと3年生後期に設定されている3年生では影響が深刻です。4年生では実習は前期の科目だったのですが、通年の科目へと変更し、今まさに施設側と調整を行っています。
ハイブリッド型では、「オンライン実習のペーパーペイシェントで思考の方法を学ぶ。」→「臨地の実習で実践する」という流れを想定しています。 オンライン実習のメリットは、落ちこぼれていく学生を救いやすいということです。特に周術期など患者さんの状況が刻一刻と変化する現場では、「ああなるほどな」と理解する前に状況が変わるため、ついていけなくなるのです。それがオンライン実習では、納得してから進められます。これが最大のメリットです。
もちろん、臨地に行くことは必要不可欠です。なぜなら学生は臨地に出たら患者さんの命を請け負い、責任をもって患者さんの前に立たなければならないためです。当学科では「実践力をもって卒業」というのを一番のポリシーにしており、1日でも多く臨地実習に行けるよう受け入れ先の施設との調整を繰り返し、最善の可能性を模索し続けています。 そのうえで教員側は、実習での到達点を見直さなくてはいけません。臨地実習が短くなる分、「臨地でなければいけない部分はどこなのか」「逆にオンラインが向いている部分はどこなのか」という部分の洗い出しが必要です。そういった意味では、今まで慣習的に行ってきた教育が変わるきっかけとなっているのではないでしょうか。それぞれのメリットをうまく組み合わせることで、コロナ禍における新しい実習となりうる可能性があると考えています。
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