こんにちは、メディックメディア編集部です。 このコーナーは、メディックメディア編集部に寄せられる読者の皆さんの質問をもとに 勘違いしやすい看護の知識をご紹介していきます。
「レビューブックの杖の項目に“杖を突いた後に患側の足を出し、次に健側の足を出す”と書いてありますが、実習先で片麻痺の患者さんが、杖の後は麻痺がない方の足から階段を上るように教わっていました。レビューブックの記載は誤りではないでしょうか?」 というお問い合わせをいただきました。
確かに、レビューブックには“杖→患側→健側”と書いてありますね。 結論から言うとレビューブックの記載は誤りではありません。そして、実習先の指導も勿論、誤ってはいません。
片麻痺の患者さんが杖移動をする場合、平地歩行と階段を上る際では、健側と患側の順番が変わります。ここが紛らわしいポイントですね。
・平地歩行のとき “杖→患側→健側” ・階段を上るとき “杖→健側→患側” ・階段を下るとき “杖→患側→健側”
レビューブックは平地歩行について記載しています。いただいた質問では、「階段を上る」とのことですから、状況が異なっていたのですね。
まず杖は、原則として健側に持ちます(患側は不安定なため)。 そして杖を一歩前に突いた後ですが、健側の足を先に出すと、患側(麻痺側)の足が置いていかれる状態になります。 患側の足を置いていくと、今度はその置いていかれた患側の足を前に出す際に、引きずったり、引っかけたりしがちです。 杖を前に突いた後、杖で支えながら患側の足を出し、最後に健側の足を前に出すことで、患側を引きずることなく安定した歩行ができます。
階段を上る際は、先に出す足に最も体重がかかります。このとき患側を先に出してしまうと、体重移動をうまく行えなかったり、不安定になったりしてしまいます。健側を先に出し、しっかりと身体を持ち上げることで、体重を前上方に移動させることができます。
階段を上る際と同様に、下る際も体重が最もかかる方を健側にする必要があります。階段を下る際には、後に残る足に最も体重がかかります。そのため、患側を先に下ろし、最後に健側で体重を前下方に移動させます。
杖歩行や階段昇降など「患者の移動・移送」は、看護師国家試験では頻出第1位である基礎看護の範囲です。 (参考:【第108回看護師国家試験】 よくでる分野TOP3とその対策)
さらに、脳血管疾患により麻痺を発症した患者の介助については、ほぼ毎年、状況設定問題で出題されています。
過去99~108回の看護師国家試験をみても、麻痺のある患者の歩行介助については4題、杖歩行に関しては4題、階段昇降に関しては3題と、頻出であることがわかります。
杖歩行の順番について問われた、第100回午後98番の問題を見てみましょう。 【問題】 AさんはT字杖での三点歩行を開始することになった。AさんはT字杖を右手に持っている。 三点歩行の指導で適切なのはどれか。 1.まず杖と右足を同時に出して、次に左足を出す。 2.まず杖と左足を同時に出して、次に右足を出す。 3.杖をついた後で、右足を出し、次に左足を出す。 4.杖をついた後で、左足を出し、次に右足を出す。
Aさんは杖を右手に持っているということは、右足が健側ということですね。 答えは、杖→左足(患側)→右足(健側)の 4.ですね!
いかがでしたでしょうか? 杖歩行について、ポイントが押さえられたでしょうか。
実際の臨床場面では、患者さんの利き脚や希望、障害の程度により異なる対応をすることもあります。しかし、上記の順番が基本なので、まずは基本をおさえておけば大丈夫です!
あとは臨機応変に、患者さんのタイミングや状況にあわせて、アドバイスができると良いですね。
※こちらの内容は、『看護がみえるvol.1基礎看護技術』 p.103〜104により詳しく掲載されています。よかったら参考にしてみてくださいね!
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