多くの施設では、代表的な疾患や病態、治療、検査についてクリニカルパスや標準看護計画が作成され、標準的な対応やケアが行われています。クリニカルパスは、疾患や治療ごとに、必要な治療や検査、ケアなどを経時的にまとめたものです。
例えば、書籍『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』の事例のように、自然気胸で胸腔ドレナージを行う患者さんに対しては胸腔ドレナージのクリニカルパスを適用し、もう1つの事例に登場するストーマ造設を行う患者さんに対してはストーマ造設のクリニカルパスを適用します。
この他に、術後感染予防のためのガイドラインや転倒転落予防のためのガイドラインなども施設ごとに作られていることが多いです。
また、標準看護計画も施設ごとに作成されています。これは、疾患・病態あるいは治療・検査ごとに想定される一般的な看護問題や看護計画をリスト化したもので、電子カルテのなかに組み込まれていることもあります。
これらは特定の疾患や治療を受けるあらゆる患者さんに対して、標準的な対応やケアをまとめたものであり、患者さんの問題に固有の原因や危険因子がなければこれらを使って対応することが可能です。しかし、クリニカルパスや標準看護計画は患者さんに対して個別的な看護を提供するには向いていません。
同じ疾患・同じ治療を受ける患者さんだとしても、症状の程度やそれによる生活への影響の程度、苦痛と感じていること、健康に対する考え方などが、患者さんによって異なるからです。標準看護計画は誰にでも共通する援助内容にとどまっており、個別に扱う問題がないかどうか探るために看護過程が必要なのです。
また、教科書や参考書に書かれているいわゆる“○○患者さんへの看護”や、事例を用いていない“○○患者さんの看護問題”も、特定の患者さんのアセスメント結果に基づいたものではありません。そのため、患者さんの個別性は反映されていないうえに、あくまで疾患や治療などを考慮した“想定しうる”看護問題にすぎないため、これらを全ての患者さんにあてはめられるわけではありません。
だからこそ、患者さんの看護過程を展開する際には、書籍に書いてある標準的な看護をただ書き写すのではなく、目の前にいる患者さんからデータを収集し、それをもとにアセスメントし、看護介入を考えていくことが重要になるのです。
(『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』p.209より一部改変して掲載)
第1版 B5判 380頁 定価(本体3,300円+税) ISBN 978-4-89632-801-1 発行日 2020-06-30
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