書籍『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』(以下、『看みえ④』)の事例解説を読んで、レポート用紙に実際にアセスメントを書くときはどうしたらいいの?と困ってしまった方、必見です! ここでは、Yさんの健康知覚-健康管理パターンのアセスメント(『看みえ④』p.195)の書き方を紹介します。この記述例と解説をもとに、誰がみてもわかりやすい、かつ過不足のないアセスメントの書き方を学んでいきましょう。 Yさんの睡眠-休息パターンのアセスメントの記述例 Yさんの役割-関係パターンのアセスメントの記述例
Yさんは、20歳の大学生、原発性自然気胸で胸腔ドレナージ治療中の入院3日目の患者さんです。アセスメントの前に情報をみておきたい人は、『看みえ④』p.194をみるか、こちらで確認しておきましょう。
※健康管理に関する情報のうち,安全対策に関する情報はない.
アセスメントの記述は、内容によって色分けしています。
大きく2つの視点に分けて記述したときの例を示します。スクロールすると、それぞれの記述のポイントを解説しているので、それも必ずチェックしましょう!(PCの方は、解説アイコンをタップすると直接解説に飛びます)
それでは、Yさんの健康知覚-健康管理パターンのアセスメントの記述例と解説をみていきましょう。
まずは、『看みえ④』で示している健康知覚-健康管理パターンのアセスメントの視点を確認しましょう。この視点で考えると、アセスメントの方向性(結論)が定まり、アセスメントが書きやすくなりますよ!はじめてアセスメントを書く場合、まず右側の「アセスメント項目」(赤字部分)ごとに書いていきましょう。
記述の最初に、「アセスメント項目」(黄緑下線)を示すと何について書かれているのかわかり読みやすくなります。ここだけでなく、すべての「アセスメント項目」においても同様です。
まずは解釈の記述です。解釈では、「Yさんのこれまでの健康に関する認識は適切か」という視点で、Yさんの状態をとらえます。適切か/適切でないか、また、意欲・願望を示すのか、解釈したことを具体的に書きましょう(緑下線)。また、解釈の根拠となった情報(青下線)を必ず書きましょう。情報の記述がないと、なぜそのように考えたのか他の人には伝わりません。 ※分析(原因・強み・なりゆきを明らかにすること)は、解釈で明らかにした現在の状態について考えるため、「これまでの健康に関する認識」については、分析の記述がありません。下記の「現在の健康に関する認識」で分析は行います。 全体の記述例へ戻る
解説①・②をふまえ、次は「Yさんの現在の健康に関する認識は適切か」という視点でとらえたYさんの状態を書きましょう(緑下線)。ここでも、解釈の根拠となる情報(青下線)を忘れないでください。 Yさんのように、適切でない反応がみられる場合、それが実在型問題(紫マーカー)になるため、問題に挙げることを明記するとわかりやすいでしょう。 解釈で現在のYさんの状態がわかったら、次は分析の記述です。特に問題が挙がったら、必ず原因・誘因を分析し、明らかにしておきましょう。なぜなら、看護介入は、問題の原因にまずは介入するのが大原則だからです。
現在みられるYさんの問題「健康状態の認識が不十分」になった原因・誘因を書きましょう(ピンク下線)。原因・誘因の分析では、Yさんの基礎情報やアセスメントの枠組みに含まれる情報など収集したすべての情報から原因・誘因を考えます。
最後になりゆきを推論した結果を記述します。現在みられるYさんの「健康状態の不十分な認識」が、今後どうなるのか具体的に書きましょう(オレンジ下線)。 ※健康状態の認識に関して特に目立った強みがみられなかったため記述していません。 全体の記述例へ戻る
他のアセスメントと同様に、記述の最初に「アセスメント項目」(黄緑下線)を書き、「Yさんの健康管理状況は適切か」という視点でとらえたYさんの状態を書きましょう(緑下線)。ここでも、解釈の根拠となる情報(青下線)を忘れないでください。
リスク型問題は、実在型問題と異なり、現在みられるYさんの「適切な健康管理状況」が今後どうなるか、なりゆきを推論することでわかります。現在のYさんは「医師の指示通り健康管理できている」という適切な状態ですが、「主体的に健康管理を行えない」という良くないなりゆきが考えられ、その危険因子が存在するため、リスク型問題(ピンクマーカー)になります。問題に挙げることと、危険因子が何かを明記しておきましょう。危険因子は、必ず今ある情報に根拠があることが必要です。今回の事例では、実在型問題として上がった「健康状態の認識が不十分」であることと、S情報4にみられる禁煙の困難感です。 ※分析(原因、誘因・強み・なりゆきを明らかにすること)のうち、原因・強みについての記載はありませんが、基本的には「解釈」の結果が適切でも不適切でも、原因、誘因・強みの分析は行います(不適切だった場合は、必ず原因への言及が必要です)。今回の事例では、特に目立った原因・強みがみられていないため記述していません。 全体の記述例へ戻る
もれなくデータ収集することは大切ですが、一度にすべてのデータを収集することは難しいです。現在のYさんの状態を解釈する時点で、情報が不足していて追加のデータ収集もできない場合は、無理に根拠のない解釈を書こうとせず、情報不足の旨を書きましょう。もちろん追加のデータ収集ができる場合は、データ収集を行い解釈・分析することでYさんの状態をより理解できます。 全体の記述例へ戻る この記事を読んで、アセスメントが書けそうかもと少しは思えましたか? アセスメントを苦手と感じる人は多いですが、何をどんなふうに考えて、書けばよいのかわかれば難しいことはありません。『看みえ④』とともに、アセスメントの核となる「人間の反応」の解釈・分析をマスターして、看護過程を楽しく学んでいきましょう。
●看護過程で考える「人間の反応」とは何ですか? ●看護過程におけるアセスメントとは何ですか? ●Yさんの睡眠-休息パターンのアセスメントの記述例 ●Yさんの役割-関係パターンのアセスメントの記述例
●「人間の反応」とは何か?→p.12 ●「人間の反応」の解釈について知りたい→p.92 ●「人間の反応」の分析について知りたい→p.95 ●原因・誘因の分析、強みの分析の手順を知りたい→p.96 ●なりゆきの分析について知りたい→p.99 ●Yさんについて知りたい(事例紹介)→p.169〜178 ●Yさんのアセスメントについて知りたい→p.190〜221 「アセスメントの書き方一覧」へ戻る
第1版 B5判 380頁 定価(本体3,300円+税) ISBN 978-4-89632-801-1 発行日 2020-06-30
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