「保健師助産師看護師国家試験出題基準 平成30年版(以下、「新出題基準」)」が2017年3月30日に厚生労働省から発表されました。本記事では、追加・削除された項目や注目すべき新項目を分野別にすべて列挙し、新出題基準を徹底分析します。
新出題基準と旧出題基準を比較し、追加・削除された項目数に着目して分析を行いました。
注目したいのは、追加と削除の差が大きい分野です。特に「看護の統合と実践」は前回の出題基準では小項目が明記されていませんでしたが、出題基準の内容が具体化され、追加項目が多くなっています。 また、「母性看護学」は追加項目が圧倒的に多く、内容の具体化・充実が図られました。一方で、「精神看護学」は項目の増減がほぼないことから、大きな内容の変化がなかったことが伺えます。
改定概要に加えて、以下のような改定が行われています。
項目の整理がメインで行われ、以前の出題基準と比べるとわかりやすくなった印象です。ただ、以下の表に挙げる項目に関しては新規で追加されたので注意しておきましょう。
改定概要に加え、以下のような改定が行われました。
改定概要にもある通り、近年の社会背景を踏まえて項目が追加されました。具体的には以下のようなキーワードです。
また、第106回で新出題基準を意識したと思われる問題が出題されていたので紹介します。
必修問題で新たに追加された項目(輸液・輸血管理に関する小項目「輸液ポンプ、シリンジポンプ」「輸液」や看護の機能と役割に関する中項目「看護の機能と役割」が「基礎看護学」でも改めて追加されました。
また、旧出題基準では5つの小項目だった内容が、新出題基準で1つの小項目にまとめられたものもあります(下記)。このように、整理の過程で削除された小項目があることにも注意しておきましょう。
追加された項目は多くはありませんが、以下に挙げるように目標に関しては大きな変更があり、体系的に学習できるように項目が整理されました。
このような体系的な項目の整理によって、弊社書籍の『レビューブック』と同じ構成になりました。弊社で考える学びやすさと新出題基準が一致した結果で、第107回対策においても効果的に使える書籍であることが改めて証明されました。
「成人看護学」での改定と連動して、経過別(急性期、慢性期、回復期、エンド・オブ・ライフ・ケア)の看護の理解が求められるようになりました。
また、目標Ⅲに大きな変化がありました。旧出題基準では「保健医療福祉制度における看護の役割について基本的な理解を問う。」となっていましたが、新出題基準では「多様な生活の場で高齢者の健康を支える看護について基本的な理解を問う。」に変化しました。具体的にみてみると、従来の施設サービス・居宅サービスに関連する項目に、「高齢者に特徴的な災害時の看護(9-Ⅰ-小項目a〜c)」などが追加されています。
旧出題基準の目標Ⅱ「健康障害のある小児と家族が生活・療養するための看護について基本的な理解を問う」が3つに分割され、目標Ⅱ「病気や診療・入院が子どもと家族へ与える影響と看護について基本的な理解を問う。」、目標Ⅲ「特別な状況にある子どもと家族への看護について基本的な理解を問う。」、目標Ⅳ「健康課題をもつ子どもと家族への看護について基本的な理解を問う。」として独立しました。
これに対応し、目標Ⅲでは中項目「虐待を受けている子どもと家族への看護」が新規で追加されており、目標Ⅳでは「成人看護学」「老年看護学」と同様、経過別に項目が整理されています。
追加された項目が最も多く、一方で削除された項目が少ない分野です。そのため、旧出題基準と比較して大幅に具体化が進んだ分野といえます。
厚生労働省の改定概要に加えて以下のような改定が行われました。
追加・削除された項目数が一番少なく、旧出題基準から大きな変更はありませんでした。 目標Ⅱ「主な精神疾患・障害の特徴と看護について基本的な理解を問う」が新設され、旧出題基準で小項目だった「精神疾患・障害」が大項目に整理され、具体化されました。疾患についての知識がより重要視されたようです。 「性同一性障害」「レジリエンス」「心理的教育アプローチ」「電気けいれん療法」「多職種連携と看護の役割」などの項目が追加されている点に注目しておきましょう。
追加された大項目・中項目の数が「老年看護学」に次いで多い分野となりました。 また、目標Ⅲ「地域包括ケアシステムにおける在宅看護の位置付けと看護の役割について基本的な理解を問う。」が新設され、他の分野(「健康支援と社会保障制度」「老年看護学」「看護の統合と実践」)でも小項目として扱われている地域包括ケアシステムの重要度が高まっていることが伺えます。
中項目では「災害時における在宅療養者と家族の健康危機管理」「急性期にある療養者」などが追加されている点に注目しておきましょう。
旧出題基準では中項目までしか明記されておらず具体性に欠けていましたが、今回の改定で小項目が追加され、国試で出題される項目が鮮明になりました。また、旧出題基準でみられた他分野との重複も整理されています。
中項目では「人材育成・活用」「看護政策と行政」「国際社会における看護の対象」などが新規で追加されたため注目しておきましょう。
一番大きく変わったポイントとして、目標Ⅳ「複合的な事象において看護の知識を統合し活用できる判断能力を問う」が挙げられます。どのような形式で出題されるのかはっきりとはわかりませんが、第106回でこの目標Ⅳを意識したと思われる問題が出題されていたのでコチラで紹介します。
Aさん(70歳、男性)は、妻と長男との3人暮らしである。左被殻出血で入院し、歩行訓練および言語訓練のリハビリテーションを行い自宅に退院した。退院時の検査所見は、HDLコレステロール40mg/dL、LDLコレステロール140mg/dL、トリグリセリド150mg/dLであった。 退院後、週1回の訪問看護を利用することになった。初回の訪問時、血圧は降圧薬の内服で130/80 mmHgであった。右片麻痺、麻痺側の感覚障害、運動性失語があり、一本杖や手すりを利用して自宅内を移動していた。Aさん宅は、酒屋を自営しており、1階は店舗、トイレおよび浴室、2階に居室がある。各階の移動は手すりのあるらせん状階段のみで、階段昇降機の取り付けは構造上できない。Aさんは「店に出て親しい客に会うのが楽しみだ」と話した。 訪問看護計画に取り入れる内容で最も優先度が高いのはどれか。
1.言語訓練 2.食事指導 3.内服薬の管理 4.排便コントロール 5.階段を昇降する練習 正解:5
長文を読解し、そこから得られた情報をもとにして優先度の高いものを選択する問題でした。設問を読むと、疾患の情報だけではなく検査値や居住環境、患者とのコミュニケーションなどたくさんの要素が含まれていることがわかります。正答率は69.4%と中程度の難易度でした。
各選択肢の出題分野と優先度の判断基準を以下に記しますが、「成人看護学」や「老年看護学」、「在宅看護論」などのさまざまな知識を統合して優先度を判定しなければならないことがわかります。
第107回国試では本問のような複雑な状況を設定し、複数分野の知識を統合して解答する問題が増えていくことが予想されます。そのためにはそれぞれの分野の知識をしっかり身に付けておくことが前提です。
出題基準が変わったからといって過去問題演習よりも有効な勉強法が出てくるわけではありません。ただ単に問題演習をすればいいという勉強法からは卒業し、周辺知識まで含めたより厚みのある勉強法が重要となるでしょう。 (過去問題集『クエスチョン・バンク』なら、1問の過去問から多くの知識を学ぶことができます。詳細はコチラ)
イメカラシリーズ
看護がみえるvol.1 基礎看護技術 第2版
レビューブック保健師2025
クエスチョン・バンク保健師2025
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【WEB公開】INFORMA for Nurse 2022春夏号
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看護初年度コレダケ -生物,数学,物理,化学,ことば-
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看護がみえるvol.2 臨床看護技術
看護がみえるvol.1 基礎看護技術
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