現在、国内では様々なアセスメントの枠組みが紹介されていますが、数が多く、どれを使用すべきか悩むこともあると思います。どのアセスメントの枠組みを使うのがよいのでしょうか。
例えば、日本の看護教育では、看護過程の展開にヘンダーソンの14の基本的欲求が使用されていることも多いです。しかし、ヘンダーソンの『看護の基本となるもの』が出版されたのは1961年であり、出版からかなりの月日が経過しています。出版当初は看護過程が現在のように発達していなかったため、看護過程の記述はありません。
そのため、ヘンダーソンの『看護の基本となるもの』をもとに看護過程を展開する際には、具体的なデータ収集項目の抽出や、問題を導くうえでの判断は、使用者が自ら考えて行うことになります。またアセスメントでは、常在条件および病理的状態の情報をふまえたうえで基本的欲求についてデータ収集する必要があり、さらに未充足という「人間の反応」の原因を分析するうえでは体力、意思力、知識の視点が必要です。このように情報が膨大なうえにいくつもの作業を必要とします。書籍『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』では,これらを考慮した「アセスメントの視点に必要な情報項目の例」を示したので参考にしてみてください。
「ヘンダーソンの定義する14 項目は生活に焦点を当てているからわかりやすい」と考えている方は、「ローパー・ローガン・ティアニーの生活行動看護モデル」を検討してもいいでしょう。なぜなら、このモデルはヘンダーソンの看護論と同じように「患者さんの生活行動と個別性に焦点を当てたモデル」だからです。そして、ヘンダーソンの看護論と違い「アセスメントを行うことを目的につくられた比較的新しいモデル」なので、看護過程に利用しやすいという利点もあります。
NANDA-Iの看護診断の分類法Ⅱをアセスメントの枠組みに使用することもあります。しかし、分類法Ⅱはあくまでも看護診断を分類する目的で開発されたものであり、NANDA-I も「アセスメントの枠組みとしての活用を意図したものではない」と明言しています。また、オスロ・メトロポリタン大学のガン・フォン・クローは、分類法Ⅱの問題点として、領域(ドメイン)や類(クラス)の重複と不足、さらに領域や類の数が多すぎて使いづらいという指摘をしており、アセスメントの枠組みとして用いるには注意が必要です。
ゴードンの11の機能的健康パターンは、もともとアセスメントの枠組みとして開発されたものだけあって、患者さんのデータをもれなく収集し、患者さんの全体像をとらえることに適しています。ただし、この枠組み自体は看護理論ではなく、また、特定の看護理論に基づいているわけでもありません。したがって、ゴードンはこのパターンを用いて看護過程を展開する場合は、いずれかの看護理論と併用する必要があると述べています。
どの枠組みを用いるうえでも重要なことは、枠組みにただデータを当てはめていくことではなく、目的をもってアセスメントし、看護につなげていく意識をもつことです。
それぞれの枠組みの特性を知り、適切な援助が行えるようにアセスメントに取り組んでいきましょう。 (『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』p.46より一部改変して掲載)
第1版 B5判 380頁 定価(本体3,300円+税) ISBN 978-4-89632-801-1 発行日 2020-06-30
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