書籍『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』では、直腸癌の直腸切断術・ストーマ造設の手術目的での入院している患者さんの事例を紹介しています。術前のアセスメントでは、術前の状態をみるだけでなく、これから受ける手術によって合併症のリスクがないかということを考慮して、患者さんの将来起こりうる“なりゆき”を考えなければいけません。
患者さんの“なりゆき”を考えるとき、その患者さんの疾患や手術に関する知識がなければ、手術や今後の合併症を考慮するのは難しいものです。そんなとき、教科書やガイドラインを用いて疾患や治療について調べたり、疾患別看護過程の書籍を調べたりして、どんなリスクがあるのかを考える人は多いのではないでしょうか。
しかし、このとき注意が必要です。術後合併症や疾患の合併症全てを、患者さんのリスク型問題として挙げてはいませんか?
もちろん、今後の患者さんにどんなことが起こりうるのかを想定することは重要です。しかし考えられること全てをリスク型問題として挙げる必要はありません。リスク型問題として挙げる必要があるのは、現在の患者さんにそのリスクとなる危険因子があるときです。危険因子があることを証明するためには、その根拠となる患者さんの情報が“今”存在していなければいけません。もちろん「将来生じるおそれがあること」は根拠になりません。
NANDA-I 看護診断を用いる際にも、同様に注意が必要です。リスク型看護診断の「危険因子」に書かれていることを、裏付けるデータがないにも関わらず「患者さんに当てはまるかも…」と考えたり、「今後(術後)患者さんが,この危険因子に当てはまるかも…」と考えてリスク型看護診断を挙げないよう気をつけましょう。危険因子が患者さんに当てはまるかどうかは、それを裏付ける患者さんの主観的なデータ(Sデータ)や客観的なデータ(Oデータ)があるのかを必ず確かめることが必要です。
(『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』p.323より一部改変して掲載)
第1版 B5判 380頁 定価(本体3,300円+税) ISBN 978-4-89632-801-1 発行日 2020-06-30
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