[著者紹介]
ベテランナース M.U ナース歴17年、救急から慢性期まで多くの経験を持ち、新人や学生の指導役も 務めたベテランナース。米国看護師試験NCLEXにも合格。気を抜くと関西弁になる。
こんにちは、M.Uです。前編につづき、アルコール依存症患者さんへの看護について書きたいと思います。 今回の事例は断酒会などへの参加を拒む患者さんへの対応と、症状アセスメントでの失敗例です。実習時の参考にしてくださいね。
実習中の学生Aさんは、アルコール依存症のBさんを受け持っていた。 AさんがBさんに断酒会への参加を促したところ、Bさんは「馬鹿にするな!」「マニュアル通り言うな」「断酒会に行ってやめられるはずがないだろう」と否定的な反応を示した。
患者さんは断酒会やAAなどの集団療法に対して先入観や間違った解釈を持っている場合があり、 Bさんの場合も「断酒会に行ってやめられるはずがないだろう」と発言していることから、断酒会に対して先入観を持っていることがわかります。 また、アルコール依存症の患者さんは自分が依存症であると認めたがらず、自分の意志でいつでもやめられるから集団療法は不要だと考えている場合が少なくありません。 このような患者さんに対しては、単に断酒会・AAへの参加を促すだけではなく、断酒会・AAに参加することの効果やメリットを十分に、そして繰り返し説明することが非常に重要です。 断酒会やAAなどの集団療法においては、真情を語りそして聞くことで得られる強い反省や自覚と、同じ悩みや辛い思いを抱える仲間との一体感が、治療や断酒の強い原動力となります。 このように、具体的に何が良いかなどを説明できるようにして患者さんに話してみましょう。また担当看護師が患者さんの状態を理解できるように、看護学生は患者さんに話した内容やそれに対する患者さんの反応などを担当看護師に報告することも重要です。 このような取り組みを行ってみてもなお、患者さんが断酒会・AAへの参加を拒否する場合もあります。そのような場合には、先輩や医師などに患者さんを説得するように依頼することも有効手段の1つです。 実際に私が病院勤務していたときにもどうしても納得されない患者さんに対しては院長がでてくることもありました…。
次の文を読み問いに答えよ。 (第103回看護師国試追試 午前68番) 断酒会について正しいのはどれか。 1.講義が中心である。 2.看護師がリーダーを務める。 3.共通の悩みを持つメンバーで構成される。 4.飲酒した時は退会することが決まっている。
解答:3 ×1 同じ体験や悩みを共有することにより、自ら解決法を見いだすことを目的とするグループワークが中心となる。 ×2 専門家がリーダーになるのではなく、メンバーが交互にグループのリーダーをつとめる。 ○3 アルコール依存という共通の悩みを持つメンバーで構成される。 ×4 飲酒してしまったからといって退会しなければいけないわけではない。むしろ、飲酒に至った経緯をメンバーで共有し、どのようにしたらアルコールをやめ続けることができるのかを共に考えることが、回復に向かうための支援となる
新人看護師のCさんは、アルコール依存症のDさんを受け持っていた。 ある日夜間に巡回していると、Dさんが「寝汗をかいて吐き気がしたよ」と言った。 Cさんは、単にDさんの体調が優れないのだと考えた。しかし先輩看護師に報告すると、「離脱症状が出現しているみたいだから、適宜観察していく必要があるわね。」と言われた。Cさんはアルコールの離脱症状として、幻覚や振戦せん妄などだけを覚えていたため、離脱症状が出現していると考えることができなかった。
アルコール依存症の離脱症状には幻覚や振戦せん妄だけでなく、精神運動興奮、不安、不眠、悪心・嘔吐、自律神経過活動、けいれんなど様々な症状があります。これらの症状を頭に入れて、離脱症状の出現にちゃんと気づけるようにすることが大切です。今回の事例で見られた症状は自律神経症状であり、この状態が悪化すると振戦せん妄(意識障害や幻覚など)になることがあるため、注意が必要です。しかし新人看護師の場合は十分に注意しても症状の発見が遅れることがあるため、患者さんの些細な変化もその都度先輩看護師に報告するようにしましょう。 また、振戦せん妄は夕刻や夜間に出現することが多いため、夜勤帯では患者の情報を看護師間で特にしっかりと共有することが大切です。
次の文を読み問いに答えよ。(第97回看護師国試 午後89番) 入院直後から粗大な全身の震え、不眠、多量発汗がみられた。眼振はなかった。前回の入院時には、入院3日に「壁中に虫がはい回っている」と訴え落ち着かない状況があった。 今後の状態で最も予測されるのはどれか。 1.肝性脳症 2.振戦せん妄 3.ウェルニッケ脳症 4.アルコール性認知症
解答:2 ×1 肝性脳症とは、慢性の肝疾患のために、腸から吸収された窒素化合物が肝を通らずに直接大循環に入ることにより生じる脳の障害と、それにより起こる意識障害である。 ○2 振戦せん妄とは、長期間の飲酒習慣のあった者が、禁酒または断酒したときに起こるアルコール離脱症状のひとつである。アルコール離脱症状が急激に現れるときには、せん妄、振戦を伴う。 ×3 ウェルニッケ脳症とは、長年のアルコール飲酒によるビタミンB1不足により、眼筋麻痺、意識障害、健忘、自律神経症状を呈するものである。急性の疾患ではあるが、断酒により起こるものではない。 ×4 アルコール性認知症とは、振戦せん妄に引き続いて起こることが多く、記銘力障害、見当識障害、作話等がみられる。
次回は、COPD患者編を配信します。実習前に確認しよう!
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