合格者の正答率が高く、不合格者の正答率が低い問題(正答率の差が30%以上)が第106回では6問ありました。これらは「合否を分けた問題」といえるでしょう。これらの問題を通じて、合否の差がつくポイントがどこにあるのか、みていきましょう。
それでは合格者と不合格者の正答率の差が大きかった問題から順番にみていきましょう。
Aさん(32歳、女性)は、営業で外出の多い業務を担当している。1か月前から発熱、倦怠感、関節痛および顔面の紅斑が出現し、近くの医療機関を受診したところ全身性エリテマトーデス〈SLE〉と診断され治療目的で入院した。入院時所見は身長160cm、体重55kg、血圧142/80mmHg。血液検査データは、白血球4,400/μL、血小板17.5万/μL、Hb12.5g/dL、クレアチニン2.5mg/dL、抗核抗体は陽性であった。入院時のアセスメントで正しいのはどれか。
1.貧血 2.出血傾向 3.易感染状態 4.腎機能低下
正解: 4
合格者と不合格者との差が第106回で最も大きかった問題です。状況設定問題で配点も高かったことから、まさに「合否を分ける問題」だったといえるでしょう。本問では全身性エリテマトーデス(SLE)の入院時のアセスメントについて問われています。不合格者においては、SLEにおける重要な合併症であるループス腎炎を覚えていなかったことが伺えます。また、クレアチニンが異常値を示しているにも関わらず、不合格者は基準値内にある白血球数から易感染状態を選んでしまったようです。このことから基準値に関しても正確に覚えられていなかったことが伺えます。本問のような検査データを読み取ってアセスメントする問題は近年増加傾向にあるため、注意が必要です。しかし検査値を覚えるだけでなく、疾患を理解することも正しいアセスメントをするためには重要です。
喀血が起こる出血部位で正しいのはどれか。
1.頭蓋内 2.気道 3.食道 4.胆道
正解:2
必修問題のなかで、不合格者と合格者との正答率の差が最も大きな問題でした。不合格者の選択率をみると、不正解選択肢のうち一番多く選ばれていたのが選択肢3の食道でした。上部消化管からの出血である吐血と混合して解答したことが考えられます。基本的で重要な知識である「吐血と喀血の違い」について、正確に理解することがポイントです。
最も順応しにくいのはどれか。
1.視覚 2.嗅覚 3.味覚 4.触覚 5.痛覚
正解:5
本問では、問題文を正しく読み解く力が問われています。「順応しにくいのはどれか」を「順応してしまうと危険な感覚はどれか」と読み解ければ正答にたどり着くことができます。不合格者の選択率をみると、不正解選択肢がバラバラに選ばれていることがわかります。このことから問題文の意味をイメージできずに、勘で選んでしまったのではないかと考えられます。
妊婦の感染症と児への影響の組合せで正しいのはどれか。
1.風 疹—————————白内障 2.性器ヘルペス——————-聴力障害 3.トキソプラズマ症—————先天性心疾患 4.性器クラミジア感染症———-小頭症
正解:1
風疹によってひき起こされる先天性風疹症候群(CRS)という単語自体は学生に馴染みがあったとは思いますが、CRSの三大症状である心奇形、白内障、難聴まではしっかり覚えていなかったよ うです。不合格者のなかで選択肢3が高い選択率になっているのは、母子感染症から先天性風疹症候群を想起し、「先天性」という単語に飛びついてしまったことが要因だと思われます。母子感染症をひき起こす病原体のみを覚えるのではなく、実際にどんな影響が児に起こるのか、もう一歩踏み込んだ理解をしておくことが求められています。
在胎40週2日。正常分娩で出生した男児。出生時体重3,300g、身長48.5cm。生後1日の体重は3,200g。バイタルサインは腋窩温37.2℃、呼吸数70/分、心拍数130/分。出生後24時間までに、排尿が1回、排便が1回みられた。生後2日、医師の診察で問題がないことが確認され、母児同室を開始した。身体測定を行うため、児を新生児室に移送した。児は四肢を屈曲させた姿勢で、体重計に乗せたとき両手を広げ、そのまま上肢を伸ばし抱きかかえるような動きをした。腹部には境界の不明瞭な紅斑が散在し、腋窩と鼠径部にはクリーム状のものが付着していた。 児の看護で適切なのはどれか。
1.手足を伸ばして寝かせる。 2.異常な反射があったと医師に報告する。 3.腹部の紅斑が散在している部位を消毒する。 4.腋窩と鼠径部のクリーム状の付着物は洗い落とさない。
正解:4
本問では、設文から新生児の状態をアセスメントし、適切な看護を導き出す力が問われています。選択肢1は健常児の正常な筋緊張状態の理解が、選択肢2は原始反射の理解が、選択肢3では新生児にみられる皮疹の理解が、選択肢4は胎脂の理解がそれぞれ求められました。多くの不合格者が選択していた選択肢3は、適応現象ではなく感染による紅斑であるとアセスメントして選んでしまったと考えられます。新生児の看護にあたって観察すべき重要なポイントをおさえておくことが必要です。
輸液セットの1mLあたりの滴下数を覚えていることが前提の計算問題が、第105回に続き今回も出題されました。第105回では成人用輸液セットでしたが、今回は小児用輸液セットに変わっています。問題のポイントとして、「小児用輸液セットの1mLの滴下数」と「計算方法の正しい理解」の2つが挙げられます。輸液セットの1mLあたりの滴下数は必修問題にも出題されており、知っている受験者は多かったかもしれませんが、計算問題を苦手にする受験者は多くいることから、最初から捨てていた受験者も一定数いるようです。
以上が第106回で合否を分けた代表的な問題でした。実は今回とりあげた合否を分けた問題は、すべて過去に問われたことがある内容です。つまり、いたずらに新しいタイプの問題をおそれたり、対策したりするよりも、過去問題の演習を通して受験者が知っておかなければいけない最低限の知識を身に付けることが重要といえるでしょう。ただし、過去問題の演習も、やみくもに進めては十分な知識を身に付けることはできません。次回のコラムでは不合格にならないための勉強法を第106回の合否を分けた問題を例にして紹介します。
乞うご期待!!
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