看護過程を展開するうえで必要な考え方は日常生活のなかにもたくさんあります。ここでは、「個別的な介入」とは何かを理解するヒントになるような話をします。
あなたは、友人A・友人Bと旅行にいく計画をたてました。いよいよ旅行前日。明日は朝5 時に東京駅に集合です。あなたが旅行の幹事だった場合、どんなことを考えるでしょうか。まずは乗りたい時間の電車に乗り遅れないよう、全員が遅刻しないようにしたいですよね。
では友人Aと友人Bの遅刻するリスクを考えてみましょう。
友人Aは、普段から時間どおりに行動するタイプです。授業にも遊びにも遅刻することはめったにありません。
一方で、友人Bはいわゆる遅刻魔です。待ち合わせに遅刻することはしばしばあり、さらに朝にめっぽう弱いタイプです(①)。友人Bの遅刻ばかりする様子は、あまり適切な行動とはいえませんよね(②)。明日5 時に東京駅に集合することを考えると、普段から遅刻する友人Bは、普段遅刻しない友人Aよりも遅刻するリスクが高いですよね。しかも朝5時に集合となると、朝に弱い友人Bが遅刻する確率はもっと高くなります(③)。
どうしたら友人Bが遅刻せずにすむか、また朝5時に東京駅に行くには、みんな早起きしなければなりませんから、友人Aにも遅刻しないように対応を考えたいところです。
そこであなたは前日の晩に、友人Aと友人Bの2人に向け、改めて明日の集合時間と寝坊しないでね、との旨をメールしました(④)。さらに遅刻するリスクが高い友人Bに対しては、別途本人と相談したうえで、起床時間にモーニングコールをすることにしました(⑤)。
これでみんな時間どおりに駅に集合することができるでしょうか… さて、あなたの思考・行動を看護過程でのステップに置きかえてみましょう。
まず①はデータ収集です。友人Aと友人Bの普段の生活から、時間を守った行動や過去の遅刻に関するデータを意図的に収集しました.②では、①で収集したデータをもとに友人B の反応(「人間の反応」)を解釈しました。ちなみに友人Aの反応は、適切な反応であると解釈できるでしょう。
次に、③では友人Bにみられる反応の“なりゆき”を分析しています(ここでは原因・誘因と強みの分析は割愛します)。分析した結果、友人B には遅刻するリスクがあると考えられ、その危険因子は「過去の遅刻歴」と「朝に弱い」ことです。
これらのアセスメントをふまえ、「友人Bが朝5時に東京駅に到着する」という目標をたて、友人Bへの介入を計画・実施したのが⑤になります。「過去の遅刻歴」を解決することはできませんが、「朝に弱い」という危険因子を軽減するため、また遅刻を回避するために、友人Bにはモーニングコールをした、というわけです。④で行った友人Aと友人B へのメールは、すべての旅行参加者に対する“標準看護計画”といったところでしょうか。
いかがでしたか。看護過程の展開には難しい側面もありますが、このように日常生活に置きかえて考えてみると、楽しく学べるかもしれません。
(『看護がみえるvol.4 看護過程の展開』p.245より一部改変して掲載)
第1版 B5判 380頁 定価(本体3,300円+税) ISBN 978-4-89632-801-1 発行日 2020-06-30
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