産業保健師とは、企業で働く保健師のことで、労働者の保健指導や健康管理に関する業務を行います。
具体的には、労働者の業務に起因する健康障害の予防、心身両面の健康の保持増進のための支援、働きやすい職場環境づくり、 ワーク・ライフ・バランスの推進などを行うことが主な役割です。企業にもよりますが、労働者は体調のことで気になることがあったら、就業中でも産業保健師に相談することができます。学校の保健室に相談にいくという感覚に近いでしょうか。
産業医は、従業員50人以上の企業で選任しなければならないと定められていますが、産業保健師に関して法の定めはなく、設置している企業はそれほど多くはありません。就業保健師(約5万6,000人)のうち、産業保健師は7%弱という割合です。
実践力と分析力をもった保健師になりたくて、大学院に進学しました。その時、産業保健実習で出会った保健師の方が、「働く人が企業の経営や日本経済を支えている、その方々が健康で活き活き働けるように支えることが産業保健師のミッションである」と情熱を語ってくださり大変感銘を受けました。私も働く人を支える一員になりたいと強く思い、産業保健師を目指しました。
大学院卒業後、全国で約3万人の従業員が就業している企業の産業保健師として就職しました。配属先の3,000人ほどの従業員がいる本社には、産業医1名、保健師2名 、看護師2名が従事しています。
業務内容は、以下のとおりです。
●健康診断関連業務 ●過重労働者対応 ●ストレスチェックの対応 ●メンタルヘルス対応・復職⽀援 ●特定保健指導(健保からの委託) ●安全衛⽣委員会参加(月1回) ●健康づくり委員会参加(月1回) ●健康施策(セミナーの企画・運営) ●健康管理室、休養室管理 ●診療の補助 ●社員対応(応急手当や適切な受診先紹介 等)
健康相談や職場巡視など、社員と直接関わる機会が多いので、社員と信頼関係を築きやすく、健康支援をしている実感があります。社員の健康支援を通じて、企業の一員として会社に貢献できていることが嬉しいです。
また、必要性(根拠)を示して企画が通れば、新たな健康支援事業を立ち上げることもできます。 例えば、対象者選定が複雑だった過重労働面談のシステムを関係者と一緒に改善したり、社員へ配布する会社独自のメンタルヘルス冊子を作ったり、それを発展させてeラーニング(インターネットを利用した学習形態)の仕組みを作ったり、健康診断や保健指導の案内や予約変更のシステムを作ったりと、関係部署と連携しながら新しいチャレンジをさせてもらえる環境なので、モチベーションが上がります。
メンタルヘルス対策では、個人への支援だけでなく、職場や組織全体をみて支援することが不可欠です。企業と社員の間で中立的な立場を保つバランス感覚や、さまざまな方をつなぐ調整力が必要と感じており、こちらもやりがいがある業務です。
さまざまなことにチャレンジするために、就職後も勉強会や学会など、ありとあらゆる研修に参加して、多くの知見を蓄積しています。
概ねイメージ通りでしたが、診療補助業務があることは想定していませんでした。当初は診療よりも保健師らしく予防活動にもっと力を入れたいと考えていたのですが、診療補助を経験することで、クリニックで対応するレベルの治療や投薬の知識がつき、保健指導にもその知識や経験を還元することができていると感じています。
何事も経験することには意味があります。入職前は想定していなかった業務を担ったとしても、そのギャップは自分で埋めていけばよいと思っています。
一般的には大学3年の実習が終わってから準備(SPI対策など)を始める人が多かったです。求人情報は、企業のホームページ、産業保健分野の求人を多くもつ人材紹介会社に登録、産業保健分野の教員、現場の産業保健師からの紹介などがあります。
新卒に関しては門戸が狭いので、行政保健師や看護師を経験してから産業保健師として就職する人もいます。ほかにも、最初は派遣や契約職員として企業に入り、正社員になるという人もいました。
大学の教員が産業保健に精通していれば、教員と一緒に就活のスケジュールを組んだり、求人を出している企業の人事部等に電話で様子を聞いてもらうことも可能です。産業保健分野の教員がいない大学では、自身で積極的に情報を入手しましょう。
いずれにしても、学生のうちから産業保健の勉強会(「さんぽ会」など)に 顔を出して人脈づくりをしておくことが重要だと思います。現場の保健師さんが多く参加しているので、そこで仲良くなると、企業の情報を教えてくれたりもしますよ。
産業保健師は働く世代の健康を支える重要な仕事です。現在でも働く人々の労働環境はさまざまな面で厳しくなり、心身の不調を抱えながら仕事をされている方も増えています。
日本を支える働く人々が健やかで活き活きと仕事ができるように、健康面から支援することはとても意義があることだと感じています。
看護師・保健師・助産師等、どのような道に進んでも、学校を卒業して就職すれば、自分自身も働く当事者になります。 まずは産業保健に関心をもっていただけたら嬉しいです。 一緒に産業保健を盛り上げてくれる方をお待ちしています!
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