合格者の正答率が高く、不合格者の正答率が低い問題(正答率の差が30%以上)が第107回では25問もありました。これらは「合否を分けた問題」といえるでしょう。これらの問題を通じて、合否の差がつくポイントがどこにあるのか、みていきましょう。
※正答率および選択率は、第107回国試を受験した31,740人の解答結果をもとに算出しています。 (小数点第2位を四捨五入しているため、合計が100%にならないものがあります) ※考察は、第107回国試を受験した看護学生へのヒアリングを踏まえて作成しております。
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→≪差≫43.6%
【問】 小腸で消化吸収される栄養素のうち、胸管を通って輸送されるのはどれか。 1.糖質 2.蛋白質 3.電解質 4.中性脂肪 5.水溶性ビタミン
全問題の中で、不合格者と合格者との正答率の差がもっとも大きな問題でした。 本設問では、中性脂肪はリンパ管によって輸送されること、次に胸管がリンパ管であるという2つの知識を理解し、組み合わせることで、選択肢4の中性脂肪を選ぶことができます。 消化と吸収に関する問題は過去にもいくつか問われていますが、消化酵素やホルモンに関するものが多く、消化された後どのように輸送されるかという知識が問われたのは初めてでした。過去問演習を通じて、より発展的な内容まで学習できていたかどうかが、合格者と不合格者の大きな違いとなったようです。
→≪差≫39.0%
【問】 災害医療について正しいのはどれか。 1.災害拠点病院は市町村が指定する。 2.医療計画の中に災害医療が含まれる。 3.防災訓練は災害救助法に規定される。 4.災害派遣医療チームは災害に関連した長期的な医療支援活動を担う。
→≪差≫37.3%
【問】 平成24年(2012年)の医療法の改正によって,医療計画には①疾病・②事業および在宅医療の医療体制に関する事項を定めることとされている。 ①と②に入る数字の組合せで正しいのはどれか。 1.4 ― 4 2.4 ― 5 3.5 ― 4 4.5 ― 5 5.6 ― 6
107回午前67番、午後77番ともに正答率に大きく差が出た問題ですが、特筆すべきはどちらも医療法における医療計画についての設問である点です。医療法は「健康支援と社会保障制度」分野の中でも5位以内にはいる頻出テーマ(part2「頻出分野・テーマはコレだ!」参照)であり、過去問題での演習もできるにもかかわらず学習が不十分な学生が多くいたと考えられます。社会制度や、法律などについては、複雑かつ、実習などで接する疾患・実技と違いイメージしにくいため、学習へのハードルが高い領域です。しかしながら本設問の医療計画のように、頻出なテーマや重要なテーマについては、最低限おさえておく必要があるといえるでしょう。 社会制度や法律などは暗記事項も多く、すべて勉強しようとするのは難しいかもしれません。しかし、落としてはいけない項目に絞ってしっかりと勉強するだけでも、効果的な国試対策になります。
→≪差≫42.8%
【問】 Aさん(62歳、男性)。1人暮らし。1週前から感冒様症状があり様子をみていたが、呼吸困難と咳嗽が増強したため外来を受診した。胸部エックス線写真と胸部CTによって特発性肺線維症による間質性肺炎と診断され入院した。 既往歴:42歳で糖尿病と診断された。59歳と61歳で肺炎に罹患した。 生活歴:3年前から禁煙している(20 ~ 59歳は20本/日)。 身体所見:BMI 17.6.体温38.8℃,呼吸数30/分,脈拍112/分,血圧140/98mmHg,経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉91%.両側下肺野を中心に、吸気終末時に捻髪音あり。呼気時は問題ないが、吸気時に深く息が吸えない。ばち状指を認める。 検査所見:血液検査データは、白血球13,000/μL、Hb10.5g/dL、総蛋白5.2g/dL、アルブミン2.5g/dL、随時血糖85mg/dL、CRP 13.2mg/dL.動脈血液ガス分析で、pH7.35、動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉38Torr、動脈血酸素分圧〈PaO2〉56Torr.胸部エックス線写真と胸部CTで、下肺野を中心に輪状影、網状影、淡い陰影あり。 Aさんは入院後に呼吸機能検査を受けることになった。換気障害の分類を図に示す。 Aさんの呼吸機能検査の結果で考えられるのはどれか。
1.A 2.B 3.C 4.D
後ほどご紹介しますが、本設問ととても似ている問題が102回午後48番にて既に出題されていました。そのため、102回午後48番では受験者全体の正答率が77.8%だったのに対し、本設問では84.5%と上昇しています。 前回の出題では、換気障害分類図のうち閉塞性換気障害をあらわす部分を答えさせる問題でしたので、換気障害分類図を覚えてさえいれば解くことができました。それに対し本設問では、「間質性肺炎は拘束性換気障害に分類される」という知識を組み合わさなければ解くことができませんが、それにもかかわらず全体の正答率は上昇しています。つまり、多くの学生が過去の出題を元に、1秒率や%肺活量の意味、拘束性換気障害、閉塞性換気障害に分類される疾患などの関連知識も紐づけて学習できていたということになります。翻って不合格者の正答率は、類題が102回で出題されているにもかかわらず依然43.8%となっており、過去問題を十分演習できていない、もしくは演習した際に関連知識などまで含めて学習できていないなどの可能性が考えられます。
→≪差≫38.6%
【問】 3L/分で酸素療法中の入院患者が,500L酸素ボンベ(14.7MPaで充塡)を用いて移動した。現在の酸素ボンベの圧力計は5MPaを示している。 酸素ボンベの残りの使用可能時間を求めよ。 ただし,小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下第1位を四捨五入すること。
おなじみとも言える酸素ボンベに関する計算問題ですが、合格者と不合格者で正答率に大幅な差がでていました。例年、計算問題は差が付きやすい傾向があります。 本設問は、酸素ボンベの残り圧力から比を用いて残り酸素量を求め、3Lで割ることによって残りの使用可能時間を求める問題で、2段階の計算が必要です。とはいえ、酸素ボンベの問題などは過去にも問われている定番の計算問題であり、計算自体も難しくないにもかかわらずこれだけ差がついているということは、非常にもったいなく感じます。計算問題は最初から捨てているという受験者も一定数いるようですが、必ず出題されるうえ、本設問のように典型的な問題を繰り返し出題する傾向が強いため、基本的な解法だけでも抑えておくべきなのかもしれません。
→≪差≫39.5%
【問】 出生体重3,200gの新生児。日齢3の体重は3,100gである。 このときの体重減少率を求めよ。 ただし、小数点以下の数値が得られた場合には、小数点以下第2位を四捨五入すること。
午前90番に続き、こちらの計算問題も合格者と不合格者で正答率に大幅な差がでていました。 体重減少率を問う問題は、計算問題としては珍しく、合格者においても正答率が約7割と低迷する結果となりました。本設問は割合を出せばよいだけなので、考え方や計算式自体はとても単純です。しかし珍しい出題だったため公式の暗記などを頼りにしている学生からすると、逆に難しく感じられたのかもしれません。初めて見るような問題でも、何が問われているか立ち止まって冷静に考えることが必要と言えます。
合否を分けた問題に対して、正答できるようになるためには、どのような国試対策が有効なのでしょうか。第107回の合否を分けた問題を例に挙げながら、弊社の国家試験問題解説集『クエスチョン・バンク看護師国家試験問題解説』で周辺知識をおさえる学習方法を紹介します。
▼換気機能診断図 図の左上の部分が問われていました。
第107回では、新出題基準の影響で複数の知識を統合して回答する問題が多数出題され、合否を分けた問題になりました。また、この出題傾向は今後より一層顕著になっていくと思われます。得点力を上げるためにも不正解選択肢の丁寧な解説や関連知識がまとまっている過去問題集『クエスチョン・バンク』での対策が有効といえます。
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