『看護がみえるvol.4 看護過程の展開(以下、看みえ④)』でアセスメントの段階として紹介している“「人間の反応」の解釈”では、アセスメントの視点ごとに、その人にとって適切な「人間の反応」かどうかを必ず考えます。このとき、他のアセスメントの視点から情報を拾い集めなければならない、と考える人が多いかもしれません。実際、初学者ではそのような方法になるのが普通といえます。
しかし本質的には、ある「人間の反応」がその人にとって適切かどうか解釈するために必要な情報は全て、その「人間の反応」に関連するという意味付けによって、ひとつに集約されるのです。どういうことなのか、ゴードンの11の機能的健康パターンを用いた例で考えてみましょう。
ある患者さんのアセスメントで、認知ー知覚パターンの「耳が聴こえない」という「人間の反応」を、その人にとって適切でないと解釈しました。 しかし、他のパターンに含まれる「人間の反応」も解釈しているうちに、次のことがわかりました。
①聴覚障害を乗り越えたことで自尊感情が高まった(自己概念ー自己知覚パターン) ②手話や筆談により、家族や職場の人と問題なくコミュニケーションがとれており、関係も良好である(役割ー関係パターン) ③強いストレスを感じてはいない(コーピングーストレス耐性パターン)
これらの情報から総合的に判断すると、認知ー知覚パターンの「耳が聴こえない」という「人間の反応」は、その人にとって適切であると解釈し直すことになります。つまり、①~③の情報はそれぞれ別のパターンに関連しているだけでなく、「耳が聴こえない」という「人間の反応」に関連する情報としてひとつにまとめられます。この患者さんの場合、①~③の情報も、認知ー知覚パターンのアセスメントの視点に必要な情報だったということです。
初学者の場合、このように解釈の途中で新たな関連に気付いて解釈し直す、あるいはもっとアセスメントを進めてから解釈し直すのは、悪いことではありません。むしろ、解釈が本当に正しいのか常に確認し、何度でもやり直すことで正確性を高める必要があります。
熟練した看護師の場合、もっと早い段階で、解釈に必要な情報をまとめることができます。なぜならデータ収集を行いながら常に頭の中で情報へ変換し、さらに必要なデータを収集し、どの「人間の反応」に関連する情報なのかを瞬時に判断するからです。1つのデータに複数の意味付けを行い、複数の情報へ変換することもよくあります。その高度な思考によって、特定の「人間の反応」がその人にとって適切かどうか解釈するための情報を全て揃えるのです。
看みえ④では、“データから情報への変換”で、1つのデータが複数の情報になるということを説明しています(図1)。1つのデータがいくつもの「人間の反応」に関連し、思いがけない意味をもっている場合もあります。このような意味に気づけるようになるためには、繰り返し看護過程を展開して知識や経験を増やすとともに、先入観をもたず患者さんの思いを理解しようとする姿勢も重要です。
図1(看みえ④p.89より)
●アセスメントの視点ごとの情報が不足していて「人間の反応」の解釈ができない場合は、どうしたらいいですか? ●データ(情報)をアセスメントの枠組みのどこに分類したらいいかわかりません。どうしたらいいですか?
●「人間の反応」の解釈の例(その人にとって適切かという解釈を含む)→p.93 ●“データから情報への変換”とは?→p.88 ●アセスメントの枠組みを活用した情報への変換の例(データが「人間の反応」に関連するという意味付け)→p.89 ●ゴードンの11の機能的健康パターン(アセスメントの視点に必要な情報項目の例、アセスメントのポイントなど)→p.58~p.67 読み込んでいます… 「Q&A一覧」へ戻る
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